セロトニンの材料は食事から摂るしかない

また、抗うつ剤と言っても脳内のセロトニンそのものを増やすわけではなく、あくまでもセロトニンが脳でうまく使えるよう働きかけるものなので、そもそものセロトニンの量があまりにも少ないと、仮に「老人性うつ」を発症した場合でも、抗うつ剤が効かないということになりかねません。

では、どうすればセロトニンを増やせるのかというと、なんと言ってもまずは食生活です。

本書の第3章で「セロトニンの材料はたんぱく質だ」という話をしましたが、もう少し具体的に言うと、「トリプトファン」と言われるアミノ酸から合成されます。

トリプトファンは体内では生成されない必須アミノ酸なので、必ず食事から取らなければなりません。だから、肉や魚、乳製品や大豆製品などのたんぱく質を多く含む食品をしっかり摂る必要があるのです。

ステーキを食べる人
写真=iStock.com/Rawpixel
※写真はイメージです

肉を1日100g食べれば、ノルマをクリア

ただし、十分な量のセロトニンが生成されて血中のセロトニンの量が増えたとしても、脳内のセロトニンがそのまま増えるわけではありません。脳には、「血液脳関門」と呼ばれる、血液中のものが勝手にどんどん脳に入っていかないようにするバリア機能があり、血中のセロトニンが脳内に入るにはそのバリア機能を超える必要があります。

和田秀樹『60歳から女性はもっとやりたい放題』(扶桑社)
和田秀樹『60歳から女性はもっとやりたい放題』(扶桑社)

その際に役立っている可能性が高いと考えられているのがコレステロールで、だから第4章でも、「コレステロールにはセロトニンを脳に運ぶ役目がある」という話をしたわけです。

コレステロールは動物性脂肪に多く含まれるので、たんぱく質も併せて摂るという意味では、肉類がもっともお勧めです。

なお、トリプトファンの1日の必要量は、体重1kg当たり4㎎(成人の場合)なので、体重50kgの人は200㎎、55kgの人は220㎎です。

100g当たりの含有量で言うと、豚ロース肉(赤身部分)は240㎎、牛肩ロース肉(赤身部分)と鶏胸肉(皮付き)がそれぞれ230㎎なので、肉を1日100g食べればトリプトファンの必要量はクリアできると考えていいでしょう。

【関連記事】
心が弱っている人がこれで前向きになれる…スタンフォードの研究が認めた「オウ体験」のすごい効果
「他人の悪口をいう人間」と付き合うと不幸になる…最高の人生には邪魔になる「縁を切るべき人」の見分け方
うつの原因は脳でも心でもなかった…長年うつに悩む患者がひそかに抱えていた「見落とされがちな症状」
75歳を過ぎたらメタボ対策をしてはいけない…高齢医療のプロが見た「老化がゆっくり進む人」の特徴
「脳トレはほぼ無意味だった」認知症になっても進行がゆっくりな人が毎日していたこと【2022上半期BEST5】